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日本にいる全ての中国人が最も読みたい物語
今の日本人が最も知るべき中国との物語
なぜ、日本にはこんなにも多くの中国人がいるのか
なぜ私たちは、今この国にいるのだろうか
その原点に迫る物語。
そして、これからの歩み方を考えるきっかけとなる物語。
本作は、残留孤児三世を主人公にした日本と中国の狭間に生きる人物の物語です。
1945年終戦当時、どのようにして日本の孤児が中国に取り残され、どのようにして日本に帰化したのか。
また、残留孤児二世は日本の社会とどのようにして向き合っていくこととなったのか。
そして、残留孤児三世の自身のアイデンティティーに対する葛藤について描いた物語です。
戦争の狭間で生きる人たち、そしてその後代がいることを、どうか忘れないでほしい。
残留孤児三世の佐々木春(李春)は、幼少時代を日本で過ごしていたが、11歳の頃、中国黒龍江省ハルビンの私立学校に留学した。春が転校した「徳強小学校」では、歴史の授業で「抗日戦争」の内容が教えられていたこともあり、春は学校中の生徒たちの目の仇にされてしまう。周囲の生徒たちからの容赦なき差別を受け続ける中、春のクラスメイトでもあり、ルームメイトたちだけは、日本人というレッテルを余所に、そんな春を「友達」として受け入れてくれた。
日中間に根付く歴史が原因で差別の対象となった春は、次第に日中の「過去」を知ることとなる。同時に、在日二世である両親との隔たりや、周囲の友達と自身との違いに悩み、葛藤し、自分の存在意義にさえ疑問を抱くようになる。
仲間との出逢い、日本人を憎しむ者との衝突、中国人との恋、親との対立、歴史との直面。激動のハルビンでの留学生活の最後は、日本人である春を恨ましいと想う者の企てにより、突如終わりを迎えることとなる。
その後日本へ帰国し六年の歳月が過ぎた頃、春は在日中国人たちと出会う。そこにもまた、歴史が残した両国民間に潜む根深い溝が存在していた。日本での生活に落ち着いていた春であったが、再び中国へ気持ちを馳せるようになり、北京の大学へと入学する。
そこで、自身と似通った生い立ち背景を持つ「日籍華僑」と呼ばれる仲間と出会う。彼らと共に過ごす日々の中、春はようやく自身の存在意義に一つの答えを見出す。しかしそんな中、日中の政治的問題により、とある事件に巻き込まれてしまった春は、中国から「強制退去」を告げられてしまう。
本作は、中国語版タイトル「問血」として、2015年8月に「中国人民日報出版社」より中国全国にて出版されました。
本作は、私が当時北京外国語大学在学四年生の頃に、日本語にて執筆し、同校日本語学科の傅(ふー)彦(えん)瑶(よう)さんに翻訳して頂きました。
私自身が残留孤児三世にあたる為、本作の主人公、李春(佐々木春)は、そんな自分自身が幼少の頃から大学時代に至るまでに感じたこと、考えてきたこと、悩んできたこと、そして私自身の経験を投影し、関係各所への取材を通して、「日本と中国」、そして「アイデンティティー」を主旨に物語を構成しました。
この度は、日本での本作の出版にあたり、当時23歳だった自分をそのままに、日本と中国との狭間で生きてきた若者をより多くの皆様にご覧頂きたく、また、皆様にとって、中国を知るきっかけ、日本と中国について考えるきっかけとなれば嬉しい限りです。
皇 沐樊
Mokuhan Sumeragi